明るい吹き抜けの校舎。休み時間には生徒たちの元気な声が響きわたります。
中野校長が描いたイラストと文字を、事務局の方がTシャツにプリントしてくれました。
ソーラーカーの前で。中高自動車部は工学院大学の研究チームの協力を得てソーラーカーを開発。工学院大学ソーラーチームは世界大会にも参戦しています。
朝、玄関では「ゼッコーチョー・ジョニー」が、生徒の靴磨きを承っています。
全体のバランスを見ながら、真剣に格闘。
流木をうまく使ってダイナミックな作品を創り上げます。
中野由章 校長 三重県伊勢市に生まれる。芝浦工業大学工学部で学び1990年、芝浦工業大学大学院 工学研究科修了。日本IBM(株)大和研究所を経て、三重県立名張西高等学校情報科の教員として着任。「自分の授業を客観的に見て研鑽したい」と、2004年に千里金蘭大学へ転身し、その後、大阪電気通信大学へ移籍。2013年に神戸市立科学技術高等学校へ着任。2021年4月から現職。工学院大学教育開発センター特任教授も併任。
私の専門はコンピュータソフト開発です。いくつかの高等学校や大学では情報教育を担当し、大学では教員養成にも関わりました。
私自身が大学の学部選びをする際に、「なぜ情報の分野を選んだのか?」と尋ねられたら、単純に「好きだから」と答えます。当時、パソコンはまだまだ高価で「パーソナル」なものではなかったので、通学路にある電気屋さんに寄ってパソコンに触れていました。そのときは「人の役に立つアプリを開発したい」などと考えなかったけれど、自分でプログラムを書いて動かしてみたいという気持ちが今につながっています。
コロナ禍で休校になった際、日本の学校教育においてICTは非常に遅れていることが明らかになりました。2019年12月に文部科学省が「GIGAスクール構想」を発表しました。小中学校の生徒一人に1台のパソコンを持たせて、全国の学校に高速大容量のネットワークを整備しようというプロジェクトでしたが、すぐに一人1台の端末が持てる状況ではありませんでした。休校になった当初はリモート授業をスマートフォンで受けていた高校生も多く、全国的に見ると、今でも高校の「GIGAスクール化」はそれほど進んでいるとは言えません。
本校はといえば、8年前から一人が1台の端末を持ち、コロナ禍が始まった頃には教員らもICTを使いこなしていました。コロナの「第六波」がやってきた今年の1月にもスムーズに時間割通りのオンライン授業ができました。
オンラインの授業でも、たとえばZoomであればブレイクアウトルームに分割してグループディスカッションを行い、質疑応答もできます。ロイロノートを使ってお互いの発表や作品を見合うことは普段の対面授業でもやってきたので、リモート授業になっても普段と変わらない学習ができました。
今年度から高校で「情報Ⅰ」の授業が始まりました。大学入試共通テストにも「情報」が出題されることになりました。情報の授業を通じて思うのは、「人が生きていくためにどうすればいいか? 何を学べばいいのか?」という問いに対する答えが、昔とはずいぶん違ってきたということです。
古代であれば、狩りの仕方や寒さをしのぐ方法を知らなければ死んでしまったでしょう。しかし、今はお金を払えば寒さをしのぐ服が買えるし、水道をひねれば水も出てきます。その仕組みがどうなっているのかを考えなくても生きています。
一方で、情報化が進んだ現代社会では、狩りの仕方よりも「どんなキーワードで検索すれば、必要な情報にたどりつけるのか?」などのスキルが求められます。生きていくために必要な能力は、ずいぶん変化しましたね。
古代と現代を比べるのは幅がありすぎるかもしれませんが、将来、世の中がどうなっているか予想がつかない限り、「学校でやる勉強が何の役にたつのか?」という質問は愚問です。勉強は何かの役に立つからするのではありません。意外なときに意外なことが役に立つことはいくらでもあります。だからこそ、「面白い」と思って勉強することをお勧めします。
本校のSTEAM教育は工学院のKをつけた「K-STEAM」です。「K」の斜体は工学院の先進性を、そして太字は工学院の新しい教育を遂行するぞという強い意志を表しています。そしてSTEAMの「A」はART=芸術と訳されることが多いですが、本校の場合はリベラルアーツを示します。
リベラルアーツは教養とも通じています。Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Mathematics(数学)だけのSTEM教育では、教養や科学的倫理観が伴いません。そこで「ART」すなわちリベラルアーツを加えることで、視野が広く、人間性も豊かな社会の構築に貢献できる人材となれるのです。
そして本校のめざすリベラルアーツは、グローバルな視野を大切にしています。たとえばインターナショナルコースでは「英語を学ぶ」のではなく、数学、理科、哲学などの教科を「英語で学ぶ」イマージョン教育を行っています。めざすのは質の高い思考や対話が英語でできる、コミュニケーション手段としての英語力です。
私は数多くの国際学会で論文発表をしてきましたが、高校生にも学会発表に挑戦してほしいと強く思います。私は決して英語が得意ではありませんが、それでも20カ国前後の国で学会発表を行ってきました。英語が得意であれば、もっと深く、素晴らしい発表ができると思います。
また、日本国内では高校生を対象とする発表の機会も増えてきました。私は情報処理学会の中高生情報学研究コンテストを運営してきましたが、「うちの生徒たちの研究にも、優秀賞を受賞した研究と遜色のないものがたくさんある」と感じています。ぜひ挑戦してほしいと思います。
同じキャンパスにある工学院大学とは、グラウンドや図書館などの施設、大学の先生による授業だけでなく、部活動でも中高大院連携しています。野球部やサッカー部、バドミントン部などは大学の施設を使って練習し、大学生がチューターとして指導してくれる部活動もあります。
たとえば、中高自動車部は大学のソーラーチームと一緒に開発を行い、「ソーラーカーレース鈴鹿2021」5時間耐久レースに出場しました。自動車部は初参戦とは思えないほどの走りを見せ、クラス5位で完走しました。
ほかにも東京薬科大学、麻布大学、東京経済大学、電気通信大学と連携関係を築き、今後は美術系大学とも連携協定を締結する予定です。高大連携・接続は大学の先生の授業を受けるだけでなく、探究論文の研究指導を受けるなど、非常に密接な関係です。「工学院大学附属高等学校に入学したら、大学の学部レベルの教育を受けていた」という学習環境が実現できることでしょう。
この学校の掲載記事をピックアップしました。