高2の3月に実施される修学旅行は、行き先の候補選定、旅程のプラン作成、現地の下見までを生徒自身が企画・運営しています。その中心を担うのが「修学旅行委員」です。2024年度(2025年3月実施)のコースは、「北海道」「沖縄」「シンガポール」。企画を担った生徒3名に活動を振り返ってもらうとともに、シンガポールコース引率の桑原章先生に生徒たちの成長について伺いました。
高2の3月に実施される修学旅行は、行き先の候補選定、旅程のプラン作成、現地の下見までを生徒自身が企画・運営しています。その中心を担うのが「修学旅行委員」です。2024年度(2025年3月実施)のコースは、「北海道」「沖縄」「シンガポール」。企画を担った生徒3名に活動を振り返ってもらうとともに、シンガポールコース引率の桑原章先生に生徒たちの成長について伺いました。
阿部勝男さん(高3)阿部さん修学旅行委員は、修学旅行の企画・立案を行う委員会です。高校に進学してすぐ、高1の5月頃にメンバーが決まります。僕は先輩から、初の海外修学旅行として「台湾コース」を実現させた話を聞き、「自分も挑戦してみたい」と強く思いました。
業者との打ち合わせなど難しそうな部分も多いのですが、だからこそやりがいがあると思い、迷わず立候補しました。将来の夢は建築士で、特にシンガポールの建築に興味がありました。自分の興味を形にしたくて、「シンガポールへの修学旅行を実現させたい!」という思いを胸に活動を始めました。
オコインさん修学旅行委員は先生方と相談しながら、国内・海外あわせて候補地を数カ所に絞り、高1の6月には全校アンケートを実施して「投票」を行います。国内コースは「北海道」と「沖縄」にスムーズに決まりましたが、海外コースは意見が分かれました。物価や予算の問題もあり、アジア圏で検討するなかで「韓国」か「シンガポール」で何度も議論し、投票を重ねました。自分たちで自由に考え、最高の思い出をつくれることに魅力を感じ、「この自由さを体験したい!」と委員に立候補しました。
野田さん高1の秋には3コースの行き先が決まり、各コースの委員長も決定します。その後2~3月にかけて現地の下見があり、各コースの委員長を中心にプランを練り上げます。僕は入学前の説明会で「生徒がつくる修学旅行」という話を聞き、そこに惹かれて委員に立候補しました。実際に活動してみると、責任の重さと同時に、自由に考え行動できる面白さを実感しました。
阿部さん僕たちが一番大切にしたのは、「どこに行くか」ではなく「何を体験するか」という視点です。委員会では候補地ごとにコンセプトを立て、プレゼンテーションで全校生徒に魅力を伝えました。動画を使ったり、熱を込めてプレゼンしたりと工夫を重ねました。
「シンガポールコース」では、名門・南洋理工大学で最先端の理系研究に触れるプログラムを組み込みました。中学生向けに足立学園で講義をしてくださった教授とのご縁で実現できたものです。さらにマレーシア訪問も行程に入れ、国境を越えて文化の違いを体感できる学びの旅にしました。
オコイン健人さん(高3)オコインさん「北海道コース」は広く、移動距離が長くなりがちです。下見の段階では、できるだけ移動を最小限にしながら内容を充実させることに苦労しました。みんなが「行きたい」と思う場所を出し合い、それをもとにルートをシミュレーションして調整を重ねました。
また、単なる観光ではなく、アイヌ文化の学びを重視しました。「ウポポイ(民族共生象徴空間)」を訪れ、アイヌの人々が歩んできた歴史や文化を体験的に学べるようにしました。実際に踊りや音楽に触れたことで、みんなも「行ってよかった」と感じてくれたようです。個人的にもアイヌの織物や芸術に惹かれるものがあり、とても印象に残っています。野田さん「沖縄コース」は、前年に続いてあまり人気がありませんでした。戦争と平和を学ぶうえでとても意義ある場所だと思っていたので、「どうしても残したい」という強い気持ちがありました。3月はオフシーズンでアクティビティの少なさが課題だったので、丸1日かけて戦争の歴史を学ぶ時間を設けつつ、日程の初日と最終日にマリンスポーツなどの楽しいプランを入れることで、学びとワクワク感の両方を味わえる構成にしました。
人数が少ない分、費用面の調整にも苦労しました。でも、下見では事前に荷物を送るより持参したほうがコストを抑えられることなど、実務的な知識を得られました。また、戦争の歴史を体感するために、事前学習として3種類のレポート(自然・文化・歴史)を作成。現地ではガマ(自然壕)を訪れ、当時の人々の体験をガイドの方から伺いました。「英語が理解できたかどうかで命運が分かれた」という話もあり、人々が言葉の壁に阻まれてコミュニケーションがとれなかったことにショックを受けました。
阿部さん多様な意見をまとめることの難しさを痛感しました。また、外部の方と直接やり取りをする経験は初めてで、「仕事としてお願いする」という社会性を学ぶ機会にもなりました。学生のうちにこうした経験ができたことは、とても貴重だと感じています。修学旅行委員長のほかに学園祭実行委員や生徒会などにも関わっているので、それぞれの経験が結びついて広い視野をもてるようになりました。
野田温日さん(高3)野田さん計画立案の難しさを学びました。天候による変更や、プログラムの順序を考える大切さなど、実践を通して身についたことがたくさんあります。現地の学びをみんながどう感じ取れるかまで考え抜く経験は、社会人になって活かせると思います。
オコインさん生徒として、委員として、どうすればみんなが楽しめるかを常に考えていました。先生方や業者の方と話すなかで、相手を説得することの難しさも学びました。生徒というより、一人の人間として対等に向き合ってもらえたことも印象的でした。修学旅行の準備段階での学びは大きかったです。
現地校との交流では記念品交換、パフォーマンス、学校内ツアーなどが行われました。
現地校との交流会でけん玉に挑戦する生徒。すぐにコツをつかんだようです。
交流校の生徒にシラット(拳法や武器術を含む武術)を教わります。
バンブーダンスを体験する生徒。軽快なステップ(?)を披露しました。
マレー文化村ではバティック染に挑戦
ユニバーサルスタジオシンガポール(USS)では、フードコート「STAR BOT CAFE」でシンガポール料理、マレーシア料理を堪能。
札幌市時計台の前で。自主研修では市内観光も楽しみました。
自主研修で訪れた歴史ある港町の小樽運河。
雄大な自然のなかでのスキーは格別です。
「特別天然記念物」「日本の地質百選」「日本ジオパーク」「ユネスコ世界ジオパーク」など、多くの項目で認定されている昭和新山
カルデラ湖としては「屈斜路湖」「支笏湖」に次いで日本で3番目の大きさの洞爺湖にて。インスタ映えします。
洞爺湖遊覧船ではカモメにエサやり体験も。
沖縄本島南部の南城市玉城字糸数にある自然洞窟(ガマ)を見学。今ある平和について考えました。
ひめゆり平和記念資料館では、ひめゆり学徒の遺品や写真、生存者の証言映像などを見ることができました。
ひめゆり平和記念資料館で目に飛びこんできた生存者のメッセージ前で立ち尽くす生徒。
ビオスの丘ではカヌーで湖面を散策。静かでゆったりした時間を過ごしました。
琉球村でのクラフト体験では旅の思い出を作品に。
水牛車に乗ってのんびり観光 阿部さん“生徒主体”という点が一番の魅力です。僕の父がOBで、剣道をするために足立学園に入学しましたが、高校では建築に興味を持ちました。「志」を育てる授業や修学旅行、生徒会活動などを通して、自分のやりたいことを見つけられる学校だと思います。
オコインさんやりたいことを全力で応援してくれる学校です。男子校ならではの距離の近さと熱気があり、どんな行事も本気で取り組む雰囲気があります。文化祭を思い切り楽しめるのも魅力。男子校だからこそ、周りを気にせず本気になれる環境が整っています。
野田さん生徒の興味や好奇心を応援してくれる学校です。「探究ゼミ」では、自分のテーマを1年間かけて深めることができます。中学生の頃に学校見学で訪れた際、「エッグドロップ実験」の授業を見て、「楽しそう! 自分もやってみたい」と思ったのを覚えています。その直感は間違っていませんでした。
桑原章先生(理科)この修学旅行は“生徒第一主義”の考えのもと、生徒自身が旅程を企画しました。本校が掲げる“学校の主役は生徒”というスローガンを体現する取り組みです。特に高2生は中学時代にコロナ禍で修学旅行が縮小された学年でもあり、「一生の思い出になるように」という思いから、生徒たちが自ら考え、作り上げる機会を実現させてあげたいと考えました。
引率する立場としては、つい手を差し伸べたくなる場面もありましたが、そこは我慢して、あえて見守る姿勢を貫きました。中学段階は手厚く支えることも大切ですが、高校では「自立」がテーマです。時に苦労しながらも、自分たちの力で成し遂げる姿を見たいと思いました。
「シンガポールコース」では、南洋理工大学の訪問が特に印象的でした。屈指の理工系大学で、“昆虫サイボーグ“など最先端の研究を見学できる貴重な機会も得られました。また、現地大学生と英語で交流しながら街を歩くB&S(Brothers & Sisters)プログラムも実施。英語やテクノロジー、生物に関心のある生徒にとって大きな刺激になったと思います。参加希望者が170名を超えたために選択制としましたが、それぞれの興味に応じた体験ができたと感じています。
準備や下見の段階から生徒の成長を感じていました。テーマ性をもって臨み、戦争など社会的な課題にも真剣に向き合う姿が見られ、単なる観光ではない、深い学びの修学旅行になったと思います。また、「探究コース」(※)の生徒にとって今回の修学旅行がまさに“探究の集大成”でした。日頃から自分の興味に基づいて研究を進め、論文やポスターを作成している生徒たちにとって、現地での体験はその延長線上にありました。
例えば、阿部くんは建築に興味をもち、南洋理工大学の建築物を自分の探究に結びつけて見ていました。オコインくんは既成の枠にとらわれず、新しいことに挑戦する力を発揮していました。野田くんは、下見の際に地震や津波警報で飛行機が飛ばないというトラブルにも落ち着いて対応し、成長を感じました。
生徒たちは本当によく頑張りました。今回は“生徒第一主義”を実践する旅でしたが、これからは「自分以外の誰かを第一に考えられる人」へと成長してほしいと思います。感謝の気持ちを伝える動画も、生徒たちが自ら企画・制作しました。反省も課題も含め、大きな学びと一生の思い出になったことでしょう。
※足立学園では高校から「探究コース」「文理コース」「総合コース」の3コースから選択できる。
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